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86円絡みで戻し売りも予想
一方、日本サイドは東日本大震災の影響で世界的な景気回復の流れから取り残されてしまいかねない。今回の深刻な被害を受けた宮城、福島、岩手は日本経済の4%ほどのシェアであるが、福島原発問題に絡んだ深刻な電力不足の問題が生じている。東京電力がカバーする地域は東京を含め日本全体の4割ほどの経済シェアを占める。こうした地域内はもとより、全国的にも部品供給などの問題から生産活動が落ち込むリスクが高まっている。
震災後、2006年までの量的緩和時を上回る資金供給に踏み切った日銀は、補正予算などと併せ、国債買い入れ額の増額など更なる金融緩和策に打って出る可能性が高い。引締め色を強めるであろう米国との金融政策格差がドル高円安圧力を高めるだろう。もう一つ注意が必要なのは、日本の貿易収支の悪化である
上記した生産活動の低下に伴って日本の輸出は落ち込む可能性が高い。一方で、被災地区での復興需要が輸入を押し上げる。95年の阪神淡路大震災の時には、震災前に月平均1.2兆円程度だった日本の貿易黒字は、主に輸入急増の影響で96年後半には6千億円程度まで半減した。今日ではそもそも貿易黒字額が当時の半分の月平均6千億円程度まで減っている。しかし、輸出の落ち込みは当時を上回ることはほぼ間違いなく、東日本大震災による被害額が阪神淡路大震災の約2倍の20兆円前後と見られていることに鑑みれば、復興需要とそれに伴う輸入増加は当時を上回る規模になるだろう。
日本の貿易収支は黒字がほぼなくなり、場合によっては一時的に赤字化する可能性さえありそうだ。特に、今夏は電力事情が最悪期を迎え、生産活動と輸出の落ち込みが厳しいものとなり、同時に被災地区での復興需要が輸入増加という形で現れやすい時期である。
86円絡みは昨年9月に日本政府が単独介入を行った際のドル円か戻る高値水準。 ドル買い円売りポジションを抱えた向きからの戻り売りも予想される。この水準を上離れるのはそう容易ではなかろうが、日本の貿易収支の悪化が明確になってくる今夏には、特に輸入企業による円売りドル買いが目立ち始める中で、その水準を突破してドル高円安が進行し始める可能性を有力視している。